「不登校、増えすぎではないか」と感じて、情報を探しているのではないでしょうか。ニュースで過去最多と報じられるたびに、自分の家庭や学校だけの問題ではないと知りつつも、拭えない不安を感じる方は少なくありません。
特に、過去の状況と比べて今の教育環境で何が起きているのか、専門家はどのように考えているのか、その理由はどこにあるのか、多くの方が知りたいと考えるはずです。この記事では、文部科学省などの公的機関による調査結果に基づき、客観的なデータから日本の不登校をめぐる課題をひも解きます。
不登校の増加という問題の背景には、学校や家庭の環境変化、そして子供たちを取り巻く社会全体の課題があります。この記事を通して、なぜ今これほど不登校が増加しているのか、同じ悩みを抱える中でどのような支援があるのかを理解し、現状を深く考えるための情報を提供します。
この記事のポイント
- 過去30年間で不登校がどれほど増加したかという具体的な推移
- 文部科学省など公的機関の調査から見える不登校の主な理由
- コロナ禍やデジタル化が不登校に与えた時代背景の影響
- 不登校の子供たちに必要な支援と社会が向き合うべき課題
不登校が増えすぎ?日本の現状を調査データで解説

- 過去30年間の不登校の推移データ
- 日本の不登校問題に関する公的調査
- 学校で子供が感じる不安といじめ
- 家庭におけるデジタル環境の変化
- 不登校の理由にコロナ禍は同じか
過去30年間の不登校の推移データ

小・中学校における不登校児童生徒数は、過去30年間で劇的に増加しています。公的データを見ると、1994年度には約6万人だった不登校児童生徒数が、2023年度には約34.6万人となり、約5.8倍にまで膨れ上がりました。これは11年連続で過去最多を更新しており、特に近年の増加ペースは著しいものがあります。
中でも深刻なのが小学校での増加です。この30年間で小学生の不登校は約13.5倍に急増しており、より低年齢化が進んでいる現状がうかがえます。
| 年度 | 小・中学校の不登校児童生徒数 |
|---|---|
| 1994 | 59,581人 |
| 2000 | 123,071人 |
| 2010 | 111,973人 |
| 2018 | 164,528人 |
| 2019 | 181,272人 |
| 2020 | 196,127人 |
| 2021 | 244,940人 |
| 2022 | 299,048人 |
| 2023 | 346,482人 |
このように、2018年度あたりから増加のカーブが急になり、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年度以降、さらにそのペースが加速していることが分かります。この数字は、不登校が特定の子供や家庭の問題ではなく、社会全体で向き合うべき構造的な課題であることを示しています。
関連記事:登校拒否の小学一年生|不登校の原因と家庭で親ができる対応
日本の不登校問題に関する公的調査
文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、不登校の要因についても報告されています。令和5年度の調査結果によると、学校側が把握している不登校の主な要因として、最も多いのは「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」で32.2%でした。
次いで「不安・抑うつの相談があった」が23.1%、「生活リズムの不調に関する相談があった」が23.0%と続きます。これらは子供本人の心身の状態に関わる要因が上位を占めていることを示しています。
一方で、「いじめ被害」を直接的な要因として学校が把握しているケースは1.3%に留まっています。この結果だけを見ると、いじめが不登校の主要な原因ではないように思えるかもしれません。しかし、この数字には注意が必要です。なぜなら、子供たちが抱える本当の理由と、学校や大人が把握できる情報との間には、しばしば隔たりがあるからです。次の項目では、この認識のギャップについて詳しく見ていきます。
学校で子供が感じる不安といじめ
前述の通り、学校側の公式な調査では、いじめが不登校の直接的な要因とされる割合はごくわずかです。しかし、子供たち自身の認識は大きく異なります。文部科学省が委託した別の詳細な調査研究では、不登校を経験した児童生徒の26.2%が、不登校のきっかけとして「いじめ被害を受けた」と回答しています。これは、不登校でない生徒の15.0%と比較して明らかに高い数値です。(出典:文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究」)
この大きな認識のギャップは、教師や大人には見えにくい所で問題が発生している可能性を示唆しています。特に近年、SNSやオンラインゲーム上でのいじめ、いわゆる「ネットいじめ」は深刻化しており、その認知件数は令和5年度に約2.5万件と過去最多を更新しました。
見えにくい現代のいじめ
ネットいじめは、学校の敷地外や大人の目が届かない時間帯に行われるため、教師が実態を把握することが極めて困難です。仲間外れや誹謗中傷が24時間続くこともあり、子供たちの精神的な負担は計り知れません。したがって、子供が学校生活に対して感じる漠然とした不安の背景に、実はこうした人間関係のトラブルが隠れているケースは少なくないと考えられます。
家庭におけるデジタル環境の変化
現代の子供たちを取り巻く環境として、スマートフォンやゲーム機といったデジタル機器の普及は無視できない要素です。文部科学省の専門家会議でも、家庭内にいながらSNSやオンラインゲームを通じて外部と容易につながれる社会の変化が、不登校に影響を与えていると指摘されています。
国立成育医療研究センターの調査では、インターネット空間を学校と同じくらい自分の「居場所」だと感じている子供が約7割にのぼるという結果も出ています。これは、現実の学校でつらい経験をした子供にとって、ネット空間が心の拠り所や避難場所になっていることを示しています。
ただ、このデジタル環境は、メリットばかりではありません。国立病院機構久里浜医療センターの調査によると、中高生の一定数がインターネット依存の疑いレベルにあり、依存度が高いほど「うつ」や「不安」「睡眠障害」といった精神症状が悪化する傾向があるとされています。生活リズムが乱れ、昼夜逆転してしまうことで、結果的に学校へ行く気力や体力が奪われてしまうケースも多いのです。(出典:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
不登校の理由にコロナ禍は同じか

2020年以降の不登校の急増を考える上で、新型コロナウイルス感染症の影響は非常に大きな要因です。コロナ禍は、それまでの不登校の理由とは少し異なる、特有の状況を生み出しました。
文部科学省は、不登校増加の背景として「コロナ禍の影響による登校意欲の低下」を公式に挙げています。(出典:令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要)全国一斉の長期休校によって、多くの子供たちの生活リズムが乱れ、学習習慣が途切れました。
また、学校が再開されても、マスク着用や黙食、行事の中止といった様々な制限が課せられました。このような非日常的な学校生活の中で、友達と親密な関係を築く機会が減少し、多くの子供たちがコミュニケーションに関する不安を抱えるようになったのです。他人との距離感がつかみにくくなったり、集団生活に馴染めなくなったりした結果、学校へ行くこと自体が大きなストレスとなり、登校意欲を失ってしまった子供は少なくありません。この影響は、現在も続いていると考えられます。
不登校が増えすぎた理由を専門家と考える
- 不登校の増加と背景にある教育課題
- 専門家が分析する不登こころの要因
- 不登校の支援に関するQ&A
- 不登校の子供との向き合い方を考える
- 不登校が増えすぎたと悩む保護者へ
不登校の増加と背景にある教育課題
不登校の増加は、子供個人の問題だけでなく、社会全体の意識の変化や教育制度の課題も背景にあります。その一つが、2017年に施行された「教育機会確保法」です。
この法律は、不登校の児童生徒に対して、学校復帰のみを目標とするのではなく、社会的自立を目指すことの重要性をうたい、休養の必要性を初めて公に認めました。これにより、「学校に行かない」という選択肢が、以前よりも社会的に受け入れられやすくなった側面があります。
保護者の意識も変化し、無理に子供を学校へ行かせるのではなく、子供の状態を尊重し、フリースクールやオルタナティブスクールといった学校以外の学びの場を探す動きが活発になりました。これは、画一的な学校教育だけが唯一の道ではないという価値観の多様化を反映しています。しかし、一方でフリースクールなどの受け皿はまだ十分ではなく、公的な支援や経済的負担の面で多くの課題が残っているのも事実です。
専門家が分析する不登校の要因
専門家は、近年の不登校の急増を単一の理由で説明することはできず、複数の要因が複雑に絡み合った結果であると分析しています。これまでに見てきた要因を整理すると、大きく以下の3つの時代的背景が浮かび上がります。
- 新型コロナウイルス感染症の長期的影響生活リズムの乱れ、人間関係を築く機会の減少、学習への意欲低下などが複合的に絡み合い、登校へのハードルを上げています。
- デジタル機器・SNSの急速な普及子供たちに新たなコミュニケーションの場や「居場所」を提供した一方で、ネットいじめやインターネット依存といった新たなリスクを生み出しました。現実世界でのコミュニケーション能力の育成にも課題を残しています。
- 社会全体の価値観・意識の変化教育機会確保法の理念が浸透し、「学校に行かなくても多様な学びがある」という考えが広まりました。これにより、子供や保護者が無理をしない選択をしやすくなったと考えられます。
これらの要因は独立しているのではなく、互いに影響し合っています。例えば、コロナ禍で外出が制限されたことがデジタル機器への依存を加速させ、社会の多様な価値観が不登校という選択を後押しするといった具合です。
不登校の子供との向き合い方を考える
不登校の子供と向き合う上で、大人が持つべき心構えは「学校復帰」だけを唯一のゴールにしないことです。子供にとって、学校に行けない状況は、すでに大きな敗北感や罪悪感を抱えている状態かもしれません。そこでさらに登校を強制することは、子供の自己肯定感を奪い、心を閉ざさせてしまう可能性があります。
大切なのは、子供の現在のエネルギー状態を見極め、本人のペースを尊重することです。まずは好きなことや興味のあることに没頭できる時間を作り、少しずつ自信を取り戻せるように支援します。ゲームでも、動画鑑賞でも、それが子供にとっての癒やしになっているのであれば、頭ごなしに否定しないことが重要です。
そして、少し元気が出てきたら、社会との接点を作るための選択肢を一緒に考えていきます。フリースクールや習い事、地域のイベントへの参加など、本人が興味を持てる小さな一歩から始めるのがよいでしょう。通信制高校や高等学校卒業程度認定試験など、学校に行かなくても将来の道は多様にあることを伝え、先の見えない不安を和らげてあげることも大人の役割と言えます。
不登校の支援に関するQ&A
子供が不登校になったら、まず何をすればよいですか?
最も大切なのは、子供の心と体を休ませることです。無理に理由を聞き出したり、登校を促したりせず、まずは子供が安心して過ごせる家庭環境を整えてください。その上で、学校の担任の先生やスクールカウンセラー、地域の教育支援センター(適応指導教室)といった公的な相談窓口に連絡を取り、状況を共有することが第一歩となります。
フリースクールとはどのような場所ですか?
フリースクールは、学校外で子供たちに多様な学びや体験活動の機会を提供する民間の教育施設です。決まったカリキュラムがなく、子供一人ひとりの興味やペースに合わせた学習支援、体験活動、人との交流の場を提供している所が多くあります。ただし、運営方針や費用は施設によって大きく異なるため、見学や体験を通じて子供に合う場所か慎重に検討することが大切です。
親としてできることは何でしょうか?
子供の話を否定せずに聴き、ありのままの子供を受け入れる姿勢を示すことが基本です。その上で、学校や支援機関と積極的に連携し、情報を集めることが求められます。また、保護者自身が一人で悩みを抱え込まないことも非常に大切です。自治体の相談窓口や「不登校の親の会」などを活用し、自身の心身の健康も守るようにしてください。
不登校が増えすぎたと悩む保護者へ
この記事では、公的データや専門家の見解を基に、不登校が増加している背景について解説してきました。最後に、重要なポイントを改めてまとめます。
- 小中学校の不登校は過去30年で約5.8倍に増加した
- 不登校の増加は11年連続で過去最多を更新中である
- 学校が把握する不登校理由は「無気力」や「不安」が上位
- 子供自身は「いじめ」を不登校のきっかけと認識している割合が高い
- 教師の認識と子供の認識には大きなギャップが存在する
- SNSいじめなど見えにくい問題が深刻化している
- コロナ禍で生活リズムが乱れ不登校が加速した
- オンライン中心の生活が対人関係の不安を増大させた
- SNSやゲームが新たな居場所と依存リスクを生んだ
- インターネット依存が睡眠障害やうつにつながる場合がある
- 教育機会確保法により「休む」という選択肢が認められた
- 社会全体の価値観が多様化し学校以外の学びが注目されている
- 不登校は単一ではなく複合的な要因で発生する
- まず子供の心身の休養を最優先することが大切
- 学校復帰だけをゴールにせず子供のペースを尊重する
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